脂質異常症

脂質異常症とは何か

脂質異常症とは「悪玉(動脈硬化を進める方向に働く)コレステロール」と表現される「LDLコレステロール」や中性脂肪が過分に増加する事、もしくは「善玉(動脈硬化を進める方向に働かない)コレステロール」と表現される「HDLコレステロール」が減ってしまう状態のことであり、善玉悪玉の概念がなかった以前は単に「高脂血症」と言われていたものです。

つまり「動脈硬化を進めない」「動脈硬化に由来する脳卒中や心筋梗塞をおこさせない」という目的から、LDLコレステロールを減らすことやHDLコレステロールを増やすことが治療対象になるわけです。

今のところ内服治療も含めより治療法が確立されているのは「LDLコレステロール」の方ですので、現状では「LDLコレステロールを減らすこと」が治療の中心になっています。

脂質異常症を探してみましょう

①近親者に脂質異常の方がいる

②近親者に原因のはっきりしない脳卒中や心筋梗塞の方がいる

③運動をしない(あまり歩かない)

④偏食がある(肉/乳製品/卵/スナックなどが多く、魚や野菜はあまりたべない)

⑤高血圧や糖尿病など他の生活習慣病がある

脂質異常症は自覚症状がありませんので、これらの項目に複数当てはまる方は年1回の健診で明らかに指摘されていなかったとしても1度是非専門的な医療機関で再検査を受けてみてください。

脂質異常を放っておくと

1にも2にも何しろ動脈硬化です。LDLコレステロールは血管壁に侵入し溜まってしまうとプラークという瘤のような物が出来てしまいます。それにより血管の内部が狭くなり血液の流れが悪くなり、動脈が硬くなりもろくなります。これが動脈硬化の状態になるわけです。

このプラークは血流を悪化させますが、そもそもこのプラーク自体が破裂すると血栓(血液の中のごみのような物)が発生します。この血栓がどこかに詰まってしまい血液の流れを阻害するとそこから先の臓器が傷んでしまいます(壊死)。それが心臓で起これば心筋梗塞に、脳で起これば脳梗塞になるわけです。

いずれも命にかかわる病気ですし、助かっても大きなダメージを残すことも多い深刻な病気です。いまだに日本人の死因の上位を占めている病気ですから、出来る事ならぜひ予防しなければなりません。

中性脂肪に関しましては特に肝臓や膵臓などのお腹の臓器に対する影響が大きいです。肝臓の影響はまず「脂肪肝」があります。脂肪肝は肝臓に中性脂肪がたまり、全肝細胞の30%以上が脂肪化している状態です。

以前は「ぜいたく病」などと言われたりして良性の疾患として比較的あまくみられていた病気です。ただ最近いろいろなことが判明してきており、以前とは異なり「肝硬変や肝細胞癌になるリスク」「狭心症や心筋梗塞になるリスク」など比較的治療は有効ではあるが重たい病気であるという研究結果が増えてきています。

ちなみに現在日本人の1/3が脂肪肝と言われており、大変重要な病気と言えるでしょう。膵臓といえば「膵炎」などがあります。高濃度(500mg /d1以上)の中性脂肪が膵臓の消化酵素にて分解されると大量の遊離脂肪酸が発生します。

これが膵臓の血管や細胞を傷つけ膵炎を引き起こします。以前は比較的アバウトに管理されてきた中性脂肪も、今はきっちり管理する必要があるとされています。

脂質異常の原因

主なものとしては「生まれつきの体質」「食事や運動などの生活習慣」になります。若干「脂質異常」とひとまとめにしましてもコレステロールと中性脂肪ではやや異なります。

実臨床でよく経験することとしてはやはり「親族に脂質異常の人がいる」という事を良く見ます。特にコレステロールは本来肝臓の細胞にて作り出すものですから、生まれ持った肝臓のその能力が影響していることが多いです。

ですので実際にはやせ形でよく運動をし飲酒もなく食事もコントロール出来ているがLDLが高い、という方もけっこういらっしゃいます。正直今の若い方は結構健康の意識が高いので「すごい過飲酒」や「毎日暴食」みたいな方はあまりおらず、「BMI35以上」みたいな方もあまりおりません。影響の度合いは差があると思われますが、体質の影響は大きいかと思われます。

中性脂肪に関してはどちらかというと「毎日揚げ物たべてる」みたいな方ではなく「炭水化物好き」「お酒好き」の方が多いです。きっちり3食ご飯を毎日食べるとか、大盛りやお代わりするなどの方が多いです。あとは毎日晩酌とかお付き合いとか飲酒頻度の高い方が多いです。もちろん運動不足や肥満気味の方も多いです。

脂質異常症の治療

基本的には食事療法や運動療法、および内服加療になります。食事療法としては糖質脂質制限が基本です。ただ、なかなかむつかしいところもあります。

以前はやみくもに「脂質は制限しよう」「卵はたべないようにしよう」などの論調があり実際にそのように治療がされていた時期もありましたが、最近の研究ではコレステロールに関しては経口摂取した20%程度しか腸から吸収されないとわかってきました。と、言う話が出ると「じゃあ卵はいくら食べてもいいんだ」と極端な意見が出てきたりしますが、「全く吸収されないわけではない」ので私個人はいまのところ「食べてもいいが1日1から2個相当まで」と指導しております。

また、こちらも最近には「飽和脂肪酸」という非常に安定した脂質の一種を過剰に摂取するとLDLコレステロールが増えてしまうのでこの「飽和脂肪酸を制限しよう」という研究結果がありました。これは卵や肉や乳製品に豊富に含まれているのでこちらを制限しようという考え方です。この考えは今のところ完全に否定も肯定もされておらず、研究過程ではありますが今のところ私はこちらの考えは意識して食事指導をしております。

ただ、脂質を摂取するから脂質を利用消費しやすくなるといった考え方も出てきたりしており、今後まだ変わってくるかもしれません。極端な情報の中にはまだ見つかったばかりで確定していないものも多分にありますので、あまり振り回されず専門家にてご相談ください。

次に内服加療についてです。まず「LDLコレステロールを低下させる薬」についてです。いろいろな種類がありますが、ここでは最も主であるスタチン系(HMG-CoA還元酵素阻害剤)についてお話します。

最近はリピトール(アトルバスタチン)やリバロ(ピタバスタチン)やクレストール(ロスバスタチン)がよく使われております。コレステロールは食事などから摂取した「アセチルCoA」という物質から作られますが、その過程で「アセチルCoA」は「HMG-CoA」という物質に変わり、その「HMG-CoA」という物質に「HMG-CoA還元酵素」という酵素が作用してコレステロールが作られます。

スタチン系はその「HMG-CoA還元酵素」を阻害することにより「肝細胞のコレステロールが低下」します。その結果「肝細胞が減ってしまったコレステロールを補おうとして血液中のコレステロールを取り込む」ことによって「血液中のコレステロールが低下」するわけです。

「肝臓の中でコレステロールを作らせないようにして、結果として血液のコレステロールが減る」と、かなりまとめるとこうなります。なので非常に効果は強いのですが、体質改善薬ではないので内服をやめればすぐに元にもどります。

「中性脂肪を低下させる薬」についてです。こちらは主に「フィブラート系」と言います。商品名的には「ベザトール」「リピディル」「パルモディア」などになります。こちらも肝臓が舞台になりますが、肝臓では「遊離脂肪酸」から中性脂肪が合成されます。逆として「中性脂肪が分解されて遊離脂肪酸にもどされる」際には「LPL(リポタンパクリパーゼ)」という酵素が働きます。この中性脂肪の合成と分解の両方に働く物質として「PPARα(ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター)」というたんぱく質があります。この「PPARα」は「肝臓での遊離脂肪酸から中性脂肪を合成する過程を阻害」します。

また、先にでました「LPL」が「中性脂肪を分解し遊離脂肪酸にもどす」のを促します。「フィブラート系薬剤が遊離脂肪酸から中性脂肪を合成分解する過程に働くPPARαに働きかけて血中中性脂肪を減らす」かなりまとめるとこうなります。こちらも体質改善剤ではないのでやめれば戻ります。

上述した2種類は非常に力があり有効です。ですが「体質改善薬」ではありません。ですので内服開始して検査値的には極めて改善したとしても「良くなった」と思い安易に内服を辞めずに、内服にて安全圏にいながら、先々で少しでも内服を辞められるよう内服量を減らせられるよう食事運動など節制をがんばる、と言うスタンスが重要かと思われます。


当院におきましてもたくさんの脂質異常の患者さんと安全なコントロールをはかるべく、一緒に頑張っております。「健診で指摘された」「家族に脂質異常や脳卒中の方がいる」「最近かなり太った」などご心配なことがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。